ダウンコートの裾を短くカットする方法【ダウンカットはめんどくさい】
寒くなると軽くて温かいダウンコートは冬場には必ずほしい1着といってもよいでしょう。しかしながら、最近は手持ちのダウンコートが同じ長さのものばかりが増えてきて、少し丈の短いダウンコートがほしくなりましたが、似たような長さのこーとが3つもあるのでこの際、ひとつのコートを短くしてみようと思い、今回ダウンコートのカットに挑戦してみることとしました。
ダウンコートとは?
ダウンとは若鳥に生える産毛だったり、色々な鳥の羽根の下に生えるむく毛やわた毛をさし、1950年代当初寝具用の布団や枕の中綿として用いられてきました。
ダウンコートが衣類としてここまで主流になったの1950年代後半くらいでダウン素材の軽さや保温性が重宝され、都市部でのカジュアルなスタイルにも取り入れられました。
ダウンをファッションアイテムとして初めて取り入れたのは、エディ・バウアー(Eddie Bauer)とされています。エディ・バウアーはアメリカ合衆国のアウトドア用品メーカーで、彼は1930年代に自身の体験から着想を得て、ダウンを使ったジャケットを開発しました。これが、後にダウンジャケットやコートの先駆けとなり、アウトドア用品から始まったダウンのファッションへの普及につながりました。
ダウン製品に使われる羽毛は、通常、以下の3つの主な種類に分類されます。
- グースダウン(Goose Down): グースの下羽毛から取られたもので、一般にはダウンの中でも高品質とされています。グースはより大きな鳥で、その下羽毛は通気性が高く、保温性が優れています。
- ダックダウン(Duck Down): アヒルの下羽毛から取られます。グースに比べて一般的にはコストが低く、羽毛の質も概してやや劣るとされていますが、適切な処理を受ければ高い性能を発揮します。
- シルクダウン(Silk Down): 最も希少で高価なものの一つで、シルクの繭から取られた繊維を含む羽毛です。シルクダウンは非常に軽く、高い保温性を持っていますが、入手が難しく、価格も高いです。
これらの種類は主に使用される動物や部位に基づいています。商品によってはこれらの羽毛を混合して使用することもあります。
- 軽さ: 羽毛は非常に軽量で、衣類や寝具に取り入れても重さを感じさせません。
- 保温性: 羽毛の中には多くの微細な空気の隙間があり、これが体温を逃がさずに保温します。
- 柔軟性: 羽毛は柔らかく、ふわふわしています。これにより、快適で柔軟な着心地を提供します。
- 通気性: 羽毛は湿気を吸収しにくく、発散性が高いため、湿気を逃がして快適な状態を維持します。
- 耐久性: 適切に保管され、手入れが行き届けば、羽毛は長期間にわたって保温性を維持します。
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ダウンコートをカットする前の準備
元々ヒザ下まであったロングコートで約10cm間隔でステッチでダウンの形を留める意味合いもあるのでしょう。平行にステッチがほどこされた薄いベージュのダウンコートです
ダウンコートの中には『ダウン(わた毛)』が入っています。このダウンを開けるということは中の羽毛が開放された状態に広がってしまうおそれがあります。
そのため、先に羽毛が広がってしまわないように短くする長さの丈の分だけミシンをかけて羽毛が広がるのを少しでも避けられるようにカットする両サイドにミシンをかけていきます。
このコートはファスナーが裾から約20cm離れた位置にファスナー止まりがついています。
つまり、ファスナー止まりの下の方にはボタンが一個ついているだけなのでこのファスナーまでの長さの丈に出来上がりを変更していきます。
なぜファスナー止まりまでなのか?もしこれがファスナー止まりが一番下まであったならば、ファスナーをほどいて空き止まりを移動しておかないといけないからほどく範囲が相当広がります。
今回はファスナー止まりが若干上の方についていたので下の約20cm程度をカットするという選択が取れたのです。
はじめにファスナーのスライダーを一番下におろしてその上下を挟むようにステッチをかける位置を決めていきます。
ファスナーのスライダーの位置より約1cm下とそれより約3cm上の2本ステッチを入れてみます。
3cmが特に決まっている数字ではなく、中綿(羽毛)を取るために2,5cm~3cm程度必要であったほうがよいと思ったからで、これが絶対の数字ではありません。
また、ミシンの針目を最大にしてステッチをかけてみたのですが、これには以下の3つの理由があります。
1・羽毛の膨らみを潰さないため
2・表布と裏布のズレを防ぐため
3・元々かけてあったステッチの幅にそろえていくため
この3つの理由でステッチ幅は最大の大きさに揃えてみました。
ダウンコートをカットする
次にミシンをかけた2つの間をはさみでカットしていきます。
ステッチの間隔を約3cmにしたのはその3cm間のダウン(綿毛)を取り外してその3cm間は表布と裏布だけにして、縫い代を作って裾の始末にするためです。
この3cmの幅は新たなコートの裾の位置にほとんど使うため、2本のステッチの裾側の方はステッチぎりぎりのところからはさみを入れていきます。裾側にはほとんど縫い代は残りません。
コートの裾にはカットしたあとの約3cm幅の空きができているので、ダウン(綿毛)が隙間からふわふわ見えています。
次にこのダウン(綿毛)の取り外しにかかります。
ダウンコートの中綿をとって、手まつりをする
次に行ったのはステッチの間のダウンの取り外しです。
ダウンとは鳥の羽根の部分で芯がなく、タンポポのようにフアフワと飛んでいきます
開けた途端に飛び散るのを想定してガムテ―プでダウンを取り込もうとしましたが、取り込む以前にふわふわと部屋のあちこちに飛んでいきます。
これではいけないとスーパー袋を取り出して袋の中にダウンを入れようかともおもいましたが、全然収まりません。
すでに部屋中に小さな綿毛がふわふぁ巻き上がってきました!もう手のつけようがありません。
ガムテープもだめ、スーパー袋でも覆い切れない・・・もっと大きな袋でコート全体を覆うか考えた末に取り出したのは45Lのビニール袋
結局コートから取り出した綿毛を部屋に充満させないためにビニールの中で綿毛を取り出すことにしました。
使ったのは目の荒いくしを使って3cmの間の綿毛を取り外します。これが一番作業がやりやすい形となりました。
しかし、一つ残念なのは袋が半透明だったために袋の外側からでは綿を取り外している状態が直に見えず、取り外している状態がきちんと確認できない点でした。ここは透明のビニール袋であったならば袋の外側からストレスなくみえたので良かったのですが、仕方がありません。
半透明の袋の隙間から中をのぞきながら綿毛をとる作業になります。
綿毛をとりはずしたら、あとはひとすら手縫いで裾をまつっていきます。
といってもばらばらになった表と裏の薄い生地をそのまままつると表と裏が不揃いになってしまって裾の仕上がりがきれいにできません。
ひとまずはポイントごとにピンをうち、少しずつまつっていきます。
ピンを打つ場所は以下の順序
1・脇左右 2箇所
2・後ろ中心 1箇所
3・前端と脇の間 2箇所
4・後ろ中心と脇の間2箇所
それからまたそれぞれの間をピンを打って、全体にピンが打てたら全体をしつけ糸で仮縫いして本縫いに入ります。(※今回は省略)
本来のコートは裾より裏布のほうが2~3cm程度控えられた状態にまつりますが、今回は少し簡易的なお直し方法にしています。それぞれ表の布のほうが裏より少し出ていて裏布は表布より5mm程度控えめの寸法です。
布は表裏ぞれぞれ薄いポリエステル素材なので響かないように繊維それぞれ1~2本程度針を通してすくいます。糸を渡す長さも4~5mm程度、広くなればなるほど隙間から綿毛が出てくる可能性もあります。
決して糸を引きすぎず、ゆるすぎずいいあんばいでまつって行きます。
ミシンを使って裾をたたく(ミシンで縫うことを「たたく」という)方法もありますが、いい素材のものは丁寧にまつってあるから風合いがきれいに出るのです。
だからここは時間の節約はせずに、手まつりをすることにしました。
完成すると、やはり思った通りの出来になり、かなり満足です。
大事な服はやっぱり大切に着て過ごしたいと思う1着の完成です。
端切れで作ったストール
カットして残った裾の部分も同じようにまつってみたらなんとも言えぬ共布のストールになりました。
こちらはミシンをかけた位置の際ぎりぎりでカットしたのでミシン糸を少しづつ外しながら表布と裏布の縫い代を中に入れ込みピンを打ち、全体の綿毛がはみ出さないように全体をピンで止めてから少しづつまつっていきました。
通常のまつりはピンを打った後、ピンだらけの状態ではまつりはしません。必ずしつけ糸でしつけをかけて本縫い(まつり縫い)をするのですが、今回のダウン(綿毛)の場合はしつけ糸でしつけをかけようとすると、中のダウンがしつけ糸につられて表がわに出てきてしまうのでしつけをかけることが出来ません。そのため、コートのときと同じように直にまつりをしていきました。
気がつけばコートとおそろいのやけにおしゃれなストールの出来上がりです。
簡単ではありませんが、丈を短くしてみたい方はぜひ挑戦してみてくださいね♬