【ニット補修】カーディガンに穴がたくさん!自分で繕う意外な方法
気に入ったセーターやカーディガンは着用する機会が多い分だけ、シミがついたまま落ちなくなったり、穴が空いたりと着れなくなる場合が多いものです。今回は穴だらけのカーディガンを独自の方法でアレンジ修正した方法を紹介します
お気に入りのものに限ってそのままタンスの中にしまいこみ「翌冬出してみたら穴が空いていて着られずにお蔵入り、捨てるに捨てられずそのまましまっている」という話がときどき聞こえてきます。
これは預かった穴だらけのカーディガンジャケットです
長年愛用していたらしく、自分で何ケ所も穴を補修したあとが見られるが、それ以上に破れた小さな穴が無数にあります。数えてみると112箇所も穴が空いているのです。
もう、着るのあきらめたら?といいたい…
「当分着ないから補修してね」といわれ、春にあずかっていたカーディガンをずっと放置していましたが、だんだん寒くなってきたのでそろそろ直さなければと思い、やっと重い腰をあげて直してみようと思い始めました。
カーディガンのたくさんの穴と服をよく観察する
はじめに、カーディガンのたくさんの穴と服をよく観察してみます
カーディガンは毛糸や伸縮性のあるニット素材なので伸び縮みのしない裏地は普通つけません。
毛糸の特徴は伸縮性があり、保温性が保たれるのでそのまま着用するのが普通です。
しかしながら預かったカーディガンは「毛糸のジャケット」風に作られていて、表地は毛糸で中に裏地がついています。
前身頃の裾はふらし仕立て(表布と裏地が裾で離れているデザイン)で、後ろの裾は裏地も一緒に縫い付けてあります。
裏地がついているので保温性があり、すべりが良いため着脱がスムーズにできます。
裾と袖口にはリブがついているため、体温を逃さず、元々保温性のある毛糸素材にさらに裏地がついているので非常に冬場あたたかいカーディガンです。
「リブ」とはゴム編みのことです。セーターの裾や袖口によく使われていますよ。
模様の花びらや葉っぱなど、すべてが人手によってひとつひとつ刺された刺繍入りで、丁寧にサテンステッチの手縫いがしてあります。
改めてよく観察してみると刺繍部分は破けたりほつれている箇所は1つもありません。穴があいているのはすべて機械編みで編まれた土台の毛糸の部分のみです。
「サテンステッチ」とは繻子(しゅす)織りの意味で、刺繍糸を刺し埋めて、糸を平行に並べて模様全体を刺し、下の糸が見えないように埋める手法です
これはきっと伯母のお気に入りなのでしょう。依頼者はすでに90歳。
これまでにも何回もほつれた部分を自分で補修しながら着ていたらしく、あちこちに手縫い糸で穴を縫ったあとがあります。それでもまた次々と穴があている状態です。
これほど自分で補修をしているというカーディガンは、よほどのお気に入りなのでしょう。
カーディガンのたくさんの穴をふさぐ4つの方法
筆者はニットの専門知識はないので、糸をつなぐ専門家の補修方法はわかりませんが、修復する方法で浮かんだのは以下の4通りです。
1・網目にそって糸を編んでつないでいく
2・刺繍が施されているので、同じように同色系の糸を使って刺繍で隠す
3・同色系のアップリケを縫い付ける
4・どう考えても自分で直すのは無理なので、専門家へお願いする
この4つの方法について具体的に考えると
「1」の編み込む方法は、無数にある穴を自分で編んでつなぐのは到底無理がある。
「3」のアップリケも穴が多すぎて不向き。
「4」の専門家へお願いするというものこの無数の数なので引き受けてくれるところがあるとは到底思えません。あったとしてもかなりの高額になってしまいます。
となると残る選択肢は「2」しかありません。今回は「2」の同色系の糸を使って刺繍で隠すやり方で補修に挑戦してみようと思います。
補修するための材料
観察の結果、まず補修するにはこの土台となっている毛糸と同じ色と細さの毛糸が必要です。
ネットで探すという方法もあるのですが、手持ちの服と同じ色をネットでは探しにくく、購入したものが届いた時には思ったものと違う場合があります。
今回は近くの手芸店に現物を持っていって同じ色を探します。
糸やボタンを探す時には必ず手持ちの現物(今回はカーディガン)をお店に持っていって実際に合わせるのが重要です。
お店を探してみましたが、地方の田舎である手芸店では同じ色の糸がなく、近い毛糸は並太の赤ちゃん用の毛糸しかありません。
あとはさしこ糸でカーディガンの模様の色と似たような茶色っぽい糸しかありません。
とりあえず今回はこの2つの糸を使って補修してみます。
- 毛糸(並太 1玉)
- さしこ糸(茶色 1束)
- かぎ針棒
- 洋裁用補修針
- 小鋏
目立たない位置からサテンステッチ
まずは、裾の部分の穴からサテンステッチをかけてみます。はじめはなるべく目立たない位置から慣れないステッチをかけていきます。
やっていくうちにだんだん手の動きもスムーズにきれいにはやくなっていくので、最初は必ず目立たない下の方から補修していきます。
5ケ所ほどサテンステッチをかけて全体をみるとやはり色の微妙な違いが目立ち、糸の太さも違うので違和感があります。
しかも、112箇所もの穴を一つ一つふさぐとかえってカーディガン自体の仕上がりが非常に汚く見えてしまいます。
ここで、手を止めて作業が中断してしまいましたー
このままでは補修作業は続けられません。
何かほかに良い方法がないものか。
同じ毛糸がないものか、
どんなふうにしたらこのままのイメージをくずさずに着れるのか。
他にできる方法はないものかと。
失敗のあと他にいいアイディアがないか考える
自宅にある生地や毛糸を改めて探してみると…
「あった!」
偶然にも同じ色の細い毛糸がなんと自宅に保管されていました。めったに使わない少ない毛糸をまとめて置いていた場所でなく、洋裁の小物を入れてあるところに一玉だけ。
いつ購入したのかも覚えていない。しかも帯も何もついていない使いかけの毛糸。
そうなるのなら初めから家の毛糸を定位置だけでなく、もっとよく探しておくべきでした。
我が家ではめったに毛糸を使わなかったのでまさか同じ色の糸があるとは思ってもみませんでした。とりあえず、はじめに購入してしまった毛糸と刺し子糸は必要のないものになりそうですが、すでにステッチした部分はそのままにして
ひとまず、一重の毛糸をかぎ針を使って編んでみようと思いましたが、糸が細すぎて弱く見えます。
では毛糸の最初と最後の2本を一緒に2重にして編んでみてはどうか?
2重にしてみたらいい感じになってきました。編みながらこれをどういうふうにカーディガンに合わせるかを考えます。
イメージも膨らんできてどんどん手が進みます。結局このかぎ針でくさり編みを約7m編み込みしました。
くさり編みした最後の2本の糸を一本は長めに50cm程度、もう一本は短めの15cm程度に残して糸を切ります。
今回イメージしたのは、この7mもの長さのくさり編みをカーディガンの穴のあいた部分に模様をアップリケのようにつけてあいた穴を塞ぎながらつないでいくという方法です。
なぜ7mもくさり編みが必要?
なぜそんなに長くくさり編みが必要なのか?それは刺繍という縫い方をするのではなく、カーディガンの外回りの穴をまとめてふさごうと思ったからです。
7mの長さは特に理由があるわけでなく、中をつながなくてもいいように長めに作るための直感です。
穴は外回りを中心に無数にあります。これをひとつひとつかがっていくのは非常に手間がかかります。
そこで考えたのがくさり編みを模様仕立てにして穴の開いている部分につぎあてていくという方法です。ここはてっとり早くくさり編みの太さを使って穴の大きさをふさいでみようと思ったからです。
たくさんの穴をふさぐにはくさり編みを模様にしてカーディガンと一体化させてみたらどうかなー?
【7mのくさり編みを使って穴をふさぐ場所】
左裾の位置から裾→左前あき部分→後ろ首まわり→右前あき部分→右裾→後ろ身頃裾→スタート地点の左裾までを1周ぐるっと回る
これでかなりの穴は塞がります。ここを重点的に塞いでから、残りの部分をふさいでいきます。
くさり編みを模様に
はじめに左下をスタートして穴の方向に向かって縫い止めていきます。
くさり編みの糸はし2本を表から裏に通して結びます。50cm程度の長い糸は残して15cmの短い糸は3cm程度裾の(リブ編み目の)網目に通して残りを切ります。
当初毛糸用のかぎ針で裏から編み込んで縫いましたが、編み込みに時間がかかるのとこのままではきれいに仕上げられないと思い、洋裁用補修針で毛糸1本どりにして半返し縫いの要領で縫いつけていく方法を試してみます。
洋裁用補修針は小さな穴に糸をとおすのではなく、針頭部にミゾがあるので、ミゾに糸をあてると中に糸が通るという優れものです。
家に1本あると非常に便利なもので1袋に4~5本入っています。
今回は細い毛糸を通して使いましたが、普通は縫い糸やしつけ糸を通して使うので、針に糸を通すのが億劫な方は、普段使いでもストレスがかからず使えるのでおすすめです。
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毛糸なので糸が補修針に通るか不安でしたが、細い毛糸だったのできちんと通りました。この補修針にくさり編みの端の50cmの糸を通して表から半返し縫いをしてまつっていきます。
穴は前端に身頃との境目にとあちこちあるので、くさり編みを迷走させるように右へ左へと縫いすすめます。
身頃のあちこちに穴はあるのでとりあえず外回り周辺でカバーできそうな範囲は、くさり編みを迷走させて縫いつけていきます。
穴がある所、目立つところは必ずくさり編みを一回転~2回転させて裏のほうで穴と穴を繋いで表のくさり編みを縫い付けます。
補修用の糸は最初は50cmしかないので途中で必ず足りなくなります。糸が終わったら最後の玉留めをして新たに一本どりの糸をつけて続けて縫いつけていきます。
最後に1周戻って来たときにくさり編みが長く残っていたら切り落として端の始末をします。逆に足りなければまた続きのくさり編みを短く縫えばいいのです。
周囲が終わったら、次には身頃の中心部分です
これは周囲の鎖編みにつなげられないので、持久戦です。
穴を1つ1つサテンステッチで縫い繋いでいきます。時々穴が近くに密集しているときには、短めのくさり編みを作って外周と同じように縫いつけていきます。
最後に袖部分が残りました。袖部分も同じようにくさり編みを30~40cmほど長めに作って縫い付けていきます。
これで完成です。
なんとなく模様っぽくみえるでしょうか?穴の大きいところは鎖編みを回転させて穴が見えないように補修しながら、それでいて全体が違和感ないように似たようなラインをつくってみました。
今回のリフォームは丸2日間という大変時間のかかる作業でしたが、穴の1つや2つなら、サテンステッチですぐにできます。
気に入った服、家族の服を生まれ変わらせるためには少しのアイディアと工夫でお気に入りの服がもっと長く着られるようになります。
身の回りのお気に入りのセーターもこんな風にあなたのやる気と少しのアイディアでもっと素敵に変身していくかもしれません。
ぜひチャレンジしてみてください。