【着物リメイク】羽織を一番簡単なエプロンワンピースに変える作り方
着物をリメイクできるくらい家にたくさんの着物があり、ほとんど着ないのに捨てられないというそこのあなた!せっかくあるのに着ないのはもったいない。『でも作りたくてもロックミシンがないから』…なんてこといわないでください。それをロックミシンを使わず洋服にリメイクする方法があります!
作りたくても、ロックミシンがないし・・・
着物地は反物になっていて元々幅がせまいるからある程度は端の始末をせずにそのまま縫えることもあるよ♪
着物の反物の幅は約一尺(38cm)、男性物は幅いっぱいにつかい、女性ものは35~36cm程度と昔の日本人の体格や生活様式に適した動きやすさを重視した作りのものになっています。
今回は着物の中でも自分のお気に入りのエプロンから型紙を取って、祖母が昔着ていた羽織をエプロンにリメイクする方法について紹介していきます。
エプロンといっても丈を少し伸ばせばそのままワンピースにもなる頭からすっぽりかぶれるストレートタイプのワンピースです。
本来、着物は昔から生活の中に根付いていた衣服であり、昭和初期まではほとんどの人が着物を着て生活をしていたのです。
現在の80歳を過ぎたおばあちゃんたちはそれが幼い頃生活着として、綿や絹、地元にある繊維を使って着物を作って着ていました。
いまでこそ着る服は洋服が主流になっていますが昔はすべての人が着物を着て生活していました。質の良い着物になるとどこを見ても縫い目の見えないすばらしい手仕事の賜物です。
リメイクはまずこの縫い目の見えない着物をほどく作業からが始まりです。
はじめに伝えておきますが、着物リメイクは一つ一つ丁寧に着物をほどく作業がとても大事です。大切に保管されていた着物ですからほどく作業も地道に丁寧に行っていきましょう
捨てられない着物の特徴を観察
はじめにリメイクする着物がどういう素材で、どんな特徴があるのかよく観察してみましょう
着物といえば、絹や麻、綿、ウール、化繊などさまざまありますが、以下着物の素材についての特徴を簡単にみてみましょう
- 正絹…吸収性と通気性がよく、肌によく馴染むが濡れると縮むため自宅での洗濯が不向き。
- 木綿…生地がしっかりしていて丈夫で汚れが目立ちにくく手入れが簡単。しわになりやすく濡れると縮む
- 麻…通気性がよく、吸収性がよいが洗濯するとシワになりやすく、色落ちしやすい
- ウール…保温性に優れていてしわになりにくく汚れにくいが虫に食われやすい。
- 化合繊…洗うことができ、手入れが楽。水分を吸収しないので汚れにくい。通気性や吸収性が悪いので蒸れやすい
着物の素材はそれぞれに特徴があります。季節に応じて、用途に応じて向き不向きがあります
この羽織は『絹』できているため、しなやかで強く美しい光沢がありながらも丈夫で吸湿性と放湿性に優れていて着心地がとても良い素材ですが、水に濡れると縮みやすい特性があるため、エプロンにするのはあまり適切ではありません。
しかしエプロンと同じ型紙を使ってワンピースにリメイクすることで『絹』という素材が一層引き立ち特別な日に着用できる1着になります。
羽織をほどく
着物をリメイクするためには、まず羽織をほどく必要があります。縫い目を外し、生地を広げます。着物のほどき方について、詳しく説明します。
着物はどこを見ても縫い目が表に見えません。はじめに身頃と袖、裏地ごとにパーツごとに大きく分けてほどいたあと、それぞれのパーツの細部をほどいていきます。まずは、表衿と裏衿をほどきます。表衿を少し引っ張り糸を探します。糸が見えたら糸切りバサミで切り少し開きます。
本来着物は手縫いのため一つ切れば直線部分などある程度はほどけるはずなんだけど、長年おいてある着物は糸の劣化のため切れやすかったり、着物の生地も薄く弱くなっているため、ほどくときには生地の痛み具合も十分気をつけてほどいてくださいね!
衿と身頃が離れたら身頃と袖を離していきましょう。また、糸の縫い始め、継ぎめ、終わり目はかんぬき止め等でしっかりと縫い止めてあるので身頃の生地を切ってしまわないように十分に糸を引いてから糸だけ切るようにしましょう。
着物をほどくときにはリッパーを使う方が多いと思いますが、この目打ちも一緒に使うこともおすすめします。
糸切りにはリッパーという優れものがありますが、リッパーは糸そのものを切ってしまうためリッパーを通した糸ががすべて切れてしまします。切れた糸はそのまま身頃に残り、その糸をまた毛抜で抜かなくてはなりません。
目打ちは糸に引っ掛けて縫い目からある程度の長さまで糸を引き抜くことができます。その引き抜いた糸の両端を切ってまた次の糸を引き抜きます。
着物をほどくのは地味に時間がかかるから音楽を聞いたりラジオを聞きながらするといいよ。でも面白いドラマにしたらそっちに夢中になって手が止まってしまうから要注意!!
最後にすべてほどけたら細かく残った糸はしをしっかりと取っておきましょう。たくさん残っている場合は生地を両手で持ってパタパタと振り下ろして残った糸を地道に抜いていきましょう。
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パターン(型紙)を作る
これから作る型紙は頭からすっぽりかぶるお気入りのエプロンから作る型紙の取り方です。
はじめにハトロン紙を一枚準備します。
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ハトロン紙とは製図用の白い広幅用紙で、表面がザラザラで裏面がツルツルした紙です。ザラザラした方に製図を書いていきます。ハトロン紙がなければ90cm×120cm程度の広幅用紙を使いましょう
お気に入りのエプロンの両肩を合わせて後ろ身頃を上にして縦半分に折ります。半分に折った後ろ身頃の中心ををハトロン紙の左端に合わせて、後ろ身頃の外観を写し取ります。
① まず後ろ襟ぐり、袖ぐり、裾のカーブを写します(写真右)
② カーブの部分を写し終えたら、次に肩線・脇線をそれぞれ直線で結びます。このとき肩線、脇線はそれぞれ前身頃と後ろ身頃を縫い合わせる時に寸法は同じでなければならないため、はかった直線の寸法は製図にメモを残しておきましょう
製図ってデザインの線をひくだけじゃないんだぁ!
あとね、後ろ襟ぐり中心と後ろ肩先、それから裾にも『「』の印があるんだけど、そこを90℃の直角にしておいてね-
③後ろ型紙の形が整ったら縫い代を先につけます。(以下参照)
後ろ襟ぐり…1cm
後ろ中心…2cm(型紙では「わ」のつもりで縫い代をつけられない状態で作成してしまったため、裁断の時に端から2cm離した状態で縫い代分をつけて型紙をおきましょう。)
肩線…2cm
後ろ袖ぐり…1cm
脇線…2cm
裾…2cm
④次に前身頃も同様に前中心から半分に折り右身頃側だけ写し取りますが前の襟ぐり線は後ろ身頃が重なっているため少しめくって写し取りましょう
⑤前襟ぐり、袖ぐり、裾線が引けたら、②の肩線・脇線の寸法を後ろと同寸法にして全体を書いていきます。脇線や肩線の寸法が合わないときには、全体をよく見て同寸法に書き直していきましょう
この肩幅は少なめに写してあるから外側にだして後ろ肩幅と同じ寸法にしたよ
⑥書き終えたら前身頃に縫い代をつけます
前襟ぐり…1cm
前中心線…2cm(型紙の中心は「わ」の状態のつもりで縫い代がつけられないため、裁断の時に端から2cm離して縫い代分をつけて裁断するようにしましょう)
前肩線…0.8cm
前袖ぐり…1cm
前脇線…0.8cm
裾線…2cm
後ろ身頃の脇線と肩線が前身頃の寸法と違うのがわかるでしょうか?これはロックミシンを使わずに、縫い方に差をつけて縫い代を始末するためにわざと寸法を変えてあります。正確に記入をお願いします
⑦最後に前身頃・後ろ身頃の横幅の一番広いところが着物の幅に入るかを確認しておきましょう。
着物の幅は概ね36~39cmなので型紙の入らない場合は着物の幅をつなげる必要があります
⑧エプロンにポケットは必須エアイテムです。お気に入りのエプロンからポケットの型紙を写し取って、お気に入りと同じポケットつけ位置にポケットの印をつけておきましょう。
ポケット口の縫い代は上に3~4cm程度、ポケット口まわりには1cm程度の縫い代をつけておきましょう
⑨写したらハサミで切り取って型紙の出来上がりです
生地を地直しする(or水通し)
ばらばらになった生地は裁断する前に地直し(または水通し)をしていきます
大きな樽(または洗濯槽)などに水をはって生地を水につけておきます
天気の良い時に陰干ししてアイロンできれいに整えます。
以下は着物に限らず一般的な水通しの内容・アイロンの適温となります。
繊 維 | 地 直 し 方 法 | アイロンの 温度 |
綿・麻 | 水通しして裏からドライアイロンをかける | 160~170℃ 180~190℃ |
毛 | 縮みやすいので十分に水通しをして裏から霧を吹いてスチームアイロンをかける | 180℃前後 |
絹 | 裏から布目を整える程度のドライアイロンをかける | 130~140℃ |
化合選 | ドライアイロンをかけてシワを伸ばす程度でよい | 120~130℃ |
裁断の前にミシンで布をつなぎ合わせる
2 型紙がそのままでは着物の幅(概ね36~39cm)に入らない場合はその不足分のみ入るように着物を先につなげてミシンをかけておきます。
生地を裁断(カット)する
写した型紙(パターン)に沿って、着物の生地を裁断します。生地を裁断するときには型紙の大きいものから裁断していきますが、 はじめに全体の型紙が入るかどうか確認しておきましょう。
今回はエプロンは前身頃と後ろ身頃、ポケットのため、後ろ身頃から裁断していきます。
① はじめに後ろ身頃を裁断します。
型紙の後ろ中心を「わ」で作った場合:布の端から2cm離して2cmの縫い代をつけて裁断します。
型紙の後ろ中心に2cmの縫い代をつけて作った場合:布の端から合わせて裁断していきます。
②前身頃を裁断
型紙の前中心が「わ」になっている場合:布の端から2cm離して2cmの縫い代をつけて裁断します。
型紙の前中心に2cmの縫い代を作った場合:布の端から生地と型紙を合わせて裁断します。
③残った布でポケットを裁断します。ポケットにはポケット口に接着芯がつくので合わせて裁断をしておきましょう。
④ 共布でバイヤステープを作っておく:袖の部分を使って布に45℃の角度で印をつけます。その印から3cm間隔で数本バイヤステープを取ります。概ね型紙の(後ろ襟ぐり+前襟ぐり+後ろ袖ぐり+前袖ぐり)×2=170cm(※個人差あり)程度。その長さになるようにミシンの工程でバイアステープを作ってつなげておきます。
テープができたら片方を5mm程度でアイロンをかけて折っておきます。
バイアステープは共布でつくれるからぜひ挑戦してみてね!
裁断するときには、型紙をおいた布は動かさずに、左手で型紙を軽く押さえながら、自分がテーブルのまわりを回ってハサミやロータリーカッターを使って切るようにしていきましょう
生地の素材や厚み、形状によって、注意点や工夫が必要な場合もありますので、必要に応じて適宜調整するようにしましょう
エプロンを縫う
さあ、前準備がずいぶんとかかりましたね。しかしながらこの準備を怠ると、きれいなエプロンには仕上がりません。ここからがエプロン縫製の始まりです。
1 まず後ろ身頃中心、前身頃中心を袋縫いにします。
①後ろ身頃を外表にして後ろ中心の縫い代0.7cmで縫い合わせます。次にアイロンで縫い代を割って身頃を中表に返します。
②次に中表の縫い代1,2cmでミシンをかけます。この時にはじめの縫い合わせた縫い代を縫い込まないように注意が必要です。これで袋縫いの完成です。
縫い代は2cmありましたが、折返しの厚みを考慮して0,1cmは返り分のゆとりを考慮してあります。
2次に前身頃中心も1と同じように袋縫いにします。
3次にポケットを作ります。
①まずはポケット口に接着芯を貼って、縫い代を出来上がりに折ります。
②ポケット口を三つ折りにして縫い合わせます。
③ポケットまわりの縫い代をアイロンで折ります。
④ポケットを前身頃に縫い付けます。それぞれパーツが別々のうちに付けておきましょう。
その他タブやループなど付属品がある場合は付属品がつけられるときには先につけておきます。
4 次に肩の縫い合わせです。前身頃の表側を上にして、肩の縫い代を1cm折ってアイロンをかけます。両肩とも裏布が表に1cm見えます
5 前身頃を表にしたまま、脇も同じく1cm折ってアイロンをかけます。ここも裏布が1cm表側に見えます。
6 次に前身頃と後ろ身頃を中表に合わせて1cmで肩を縫い合わせ,折り伏せ縫いを行います。このとき、後ろ肩の縫い代が前肩の曲げたところに入るようにしてください。(後ろ肩は0.8cmの縫い代にしているため、無理に押し込む必要はありません。布の厚みと重なり部分を考慮して若干の誤差が生じますが概ね近いかたちの肩線が出来上がります。)
7 同じく脇線も前身頃と後ろ身頃を中表に合わせて③と同様に前身頃の1cm折り曲げてある縫い代に後ろ身頃の縫い代を挟み込んで折り伏せ縫いをかけます
ここで前身頃と後ろ身頃は繋がりましたね
8 次に首周りのバイヤステープをつなげます
①バイアステープは正バイアスにとったテープを交差させてミシンをかけます。同じ方向につなげることで長さは調節できます。バイアステープがつながったら3cm幅の片方を0.5cm程度でアイロンで折っておきましょう
②バイヤアテープは身頃のサイドネックポイントから縫いはじめを1cm出来上がりに折り曲げて縫い始めます。身頃の裏側からミシンをかけて一周回ったら最後の1cmを重なるようにして残りのテープを切ります。
③次にバイアステープを表に返して②の縫い目を隠すように上からステッチをかけていきます
8 次に袖ぐりのバイヤステープも7と同様につなげます。つけ始めは袖下の方から始めるとバイヤステープのつなぎ目が目立たなくなるので袖下の方から縫い始めましょう
9 最後に裾を折り曲げて縫います。
①縫い代を多めにとると裾に広がった縫い代が余ってしまい、ミシンがかけにくくなるため今回は裾の縫い代を2cmと少なめにしてありますが、それでも多いことに変わりありません。
②ミシンをかけるまえに必ずアイロンで出来上がりに折り曲げてしつけ糸でしつけをかけてからミシンをかけていきましょう。
10 縫い終えたらエプロン全体に、アイロンをかけて仕上げを整えます。 アイロンは、素材に合わせた温度や湿度に注意しながら、縫い目が平らになるようにかけます。
縫い目がきれいに仕上がっているか、特に重要な部分や目立つ部分などを中心にチェックします。
これで完成です。
服はひとつひとつのパーツが積み重なって出来上がっていきます。縫い方は様々な方法があり、これが最善ということではもありません。今回の方法は縫い方の一つでしかありません。
デザインや素材によって、また持ち合わせている洋裁の道具があればあるものを生かして、なければないなりに工夫していくのが、ものづくりの楽しみであると思います
お手入れについて
元は羽織とはいえ、エプロンにリメイクした場合、エプロンは日常生活の普段着として着用し、洗濯する機会の多い服装になります
今回はエプロンではあまり使わない絹を使いましたが、日常でよく使うならばエプロンとして勧められたものにはなりませんので、洗濯に強い綿やポリエステル糸の素材での製作を試みましょう.
エプロンを作る素材に応じて、洗濯方法や乾燥方法が異なりますので、洗濯方法を必ず確認しましょう。着物というより『素材を意識』して確かめることが大切です
エプロン作りは、自分だけのオリジナルアイテムを作ることができるため、自分の好みやセンスを活かして、楽しみながら取り組んでみてください。
おばあちゃんが大切にしてきた着物など捨てるのは簡単ですが、着物は高価でもあり、手間ひまかけて作られた日本の民族衣装でもあります。
思いのこもったものは捨てずにぜひリメイクしてまた新たな着こなしに挑戦してみてください。