【新文化式原型の描き方】自分サイズの洋服を作るための最初の一歩♬(袖原型の描き方付き)
かこみ製図(原型を使わない製図)で描いた服を作って着たとき、肩がちょっと落ちていたり、胸が少し引っ張られて、なんとなく違和感があってしっくりこない、なんてことはありませんか?
それは自分の体にフィットしていないから。自分にとって着心地のいい服はちゃんと自分の体のサイズに合う服。ゆったりめの服ばかり着ていたら気が付かないことも、きちんと自分の体の特徴にあわせて作るのが原型です。
今回は自分で洋服を作る人のための自分サイズの「原型」の作り方について紹介していきます。
新文化式原型の「原型」とは
服作りにおいて洋服を裁断する方法には平面裁断と立体裁断があります。平面裁断はデザインを元に平面作図からパターンを作り、それを裁断して縫い上げてつくる方法で立体裁断は人体に直接布をあて形をつくる方法があります。
どちらの方法をとってもデザインの元の製図は同じであるはずなのですが、立体裁断は直接布をあてて布目を通してイメージの形を作り、それを分解して紙に落とし込み製図して行く方法ですが、これには高度な技術と視覚的な感性ので表現力が求められるため、熟練が必要となります。
ここではこれから服作りを楽しむ方法として平面から作図する基礎となる自分の「原型」をつくっていきます。原型には「文化式」と「ドレメ式」の2種類がありますが、ここでは「文化式」のやり方を紹介していきます。
「原型」は洋服の型紙を作る時の基礎ラインで原型の上にブラウスやワンピース、ジャケットなど自分が作りたい洋服の線を引くことでより自分にフィットした型紙が作れるようになります。
市販の洋服はS,M,L,LL,3L,4Lなどサイズで表記されていますがそれらはすでに原型を元に洋服の形が作られたパターン(型紙)のサイズのことを言いますので、原型とは呼びません。
原型は一度作ってしまえばよほど体型が変わらない限りいつでもその「原型」を元に自分が作りたいブラウスやワンピースやジャケット、コートなど好きなデザインを作ることが可能だよ
では早速自分サイズの原型を作っていきましょう
材料
はじめに作図するにあたって準備するものは紙と鉛筆と50cmから1mの定規があれば十分なのですが、計算式がたくさん出てくるので電卓も必要です。作図はハトロン紙を使って製図することをおすすめします。
- ハトロン紙
- 鉛筆
- 消しゴム
- 電卓
- 定規(50cm~1m)
「原型」を描く前に自分の体のサイズを測る必要があります。洋服を着た上からでは正確に自分のサイズが測れないため、より裸体に近いインナーや薄いシャツのみの状態で採寸をするとよいでしょう。原型を作るための測るポイントは以下の3つのみです。
①バスト…バストポイントを通る水平な周径
②ウエスト…胴の細い位置で、ウエストベルトの収まりの良い位置で細いテープを巻いて測る周径
③背丈…後ろ首の付け根の骨(第7頸椎突起の先端)からウエストまでの長さ
採寸するときには全身の見える鏡の前でメジャーが水平になっているか確認しながら測ることをおすすめします。
はじめに『原型』の基礎線を引く
ここでは採寸した寸法をバスト(B)100cm、ウエスト(W)76cm,背丈38cmと仮定して作成していきます。少し胸の大きいふくよかなタイプです。これから自分の原型を作る方はこの上記の寸法の数字の位置に自分のサイスを当てはめて作成してみてください。
はじめに原型を書く前の基礎線を引いていきます。少し胸の大きいタイプの原型です。(注:袖の原型は割愛しております。)
原型を引くときにはポイントとなる点にA点~G点、または同じ寸法を使うところに▲◎●などと記号が入れてあります。作図する中で使いますので製図上に必ず寸法と記号をメモしておきましょう。
【基礎線を描く】
①縦に背丈寸法(38cm)、横にB/2+6cm=56cmの線をかきます。
②次にバストライン(BL)を引きます。A点から下の方に向けてB/12+13.7cm=22cmの位置に水平に線をかきます。これがバストラインになります。
③次に後ろ身頃の背幅線をB/8+7.4cm=19.9cmをとり、直上してA点との間に長方形をかきます。
④A点から下へ8cmの位置に水平線を引き、2等分から1cm右側にE点を取ります。ここは後ほど肩ダーツを引くため必要となります。
⑤右側まで引いたバストラインから上に向けてB/5+8.3=28.3cm、右上のはしの太文字、ここをB点とします。
⑥右上のB点から左に水平線を書いておき、バストラインでB/8+6.2=18.7を直上してB点から書いた水平線とつなげます。これが胸幅線となります。
⑦胸幅の2等分線から左に0.7の位置をバストポイント(BP)とします。
⑧前胸幅の左側にB/32=3.1を取ります。ここをF点とします
⑨図1のC点からF点までを2等分してウエストラインまで直下します。ここが脇線となります。
⑩次にD点とC点の間を2等分してさらにそこから0.5cm下から右側へ水平線を引きます。
前身頃の原型を描く
ここから前身頃の原型を描いていきます。
⑪右上のB点から左にB/24+3.4cm=7.5cm(◎)をとります。(side neck point(=SNP)という)次にB点より下に◎+0.5 その点をそれぞれ水平、直下して長方形を作り、B点から斜めに結びます。
⑫⑪の斜めの斜線を3等分して下から1/3の点から下に0.5の位置をと通って前襟ぐり線を書きます。
⑬SNPから左に8cmの位置で下に3.2cmを取り直線をひき、さらに延長して1.8cmの位置まで直線をかきます(●)。これが前肩線となります。
⑭G 点とBPを結びその線から上にG点よりB/12-3.2=5.1cmをとり、胸ぐせダーツ量とします。ダーツの長さをそろえ、⑬の前肩線から胸幅線にダーツまでを結びますが、前肩線の出だしは直角にして胸幅線に接するように前袖ぐり線の上部を書きます。今回は胸幅線よりも少し中に入ってしまいましたが、後ほどダーツを合わせてみて調整していきます。
⑮Fから脇線までを3等分して(▲)F点より左斜め上に向けて▲+0.5cmの点を取り、G点から脇線に向けて袖ぐりの下の方のカーブをかきます。
⑯⑭と⑮を合わせて前袖ぐり線となります。
後ろ身頃の原型を描く
⑰次に後ろ身頃に入ります。A点より水平線上に◎+0.2cmをとり、その1/3を直上した位置がSNPとなります、ここでA点からSNPまでの後ろ襟ぐり線をかきます
⑱SNPから水平線に8cmの位置で直下2.6cmをとり、SNPからと結び●+(B/32-0.8)まで線をかきます。これが後ろ肩線となります。
⑲E点を直上し肩線と交わる位置から右に1.5cmの位置に線をかき、そこからさらに右側にB/32-0.8=2.3cmをとりE点と線をかきます。これが肩ダーツとなります。
⑳C点より45°の線上に▲+0.8cmを取り、後ろ肩線に対して出だしを直角にスタートしてから背幅線と接し、脇線までをカーブでつないでで後ろ袖ぐり線を書きます。
前袖ぐり線に補正線を加える
ここで原型の外枠はできましたが、先程の⑭での胸ぐせダーツ部分の袖ぐり線がそのままなので胸ぐせダーツをたたんで袖ぐり線の修正を加えていきます。基礎線の胸幅線の内側に入ることは体の内側に入るということなので、これを元に服の製図をしたら全ての服がきつくなってしまうので好ましくありません。胸幅線の内側にいかないようにダーツをたたんだ状態で前袖ぐり線をかき直します。
㉑書き直したものをもう一度広げて原型の形を確認します。
ウエストダーツを書いていく
㉒次にウエストダーツを書いていきます。ダーツは6ヶ所あります。これは細かく平均値を出して多数のデザイン線に対応できるようにバランスよく配置されています。これから服作りをデザインするときに応用して展開しやすくするため大いに役立つので書いておくべきラインになります。
まずはダーツの量になります。参考までに総ダーツ量の出し方は、身幅(B/2+6)ー(W/2+3)となります。今回の場合は(100/2+6)ー(76/2+3)=15となるので総ダーツ量は15cmとなります。
ダーツは右からa~fまで総ダーツ量に対しての比率で計算してありますので下表を参考にしてかきます。
総ダーツ量 | f | e | d | c | b | a | |
100% | 7% | 18% | 35% | 11% | 15% | 14% | |
9 | 0.630 | 1.620 | 3.150 | 0.990 | 1.350 | 1.260 | |
10 | 0.700 | 1.800 | 3.500 | 1.100 | 1.500 | 1.400 | |
11 | 0.770 | 1.980 | 3.850 | 1.210 | 1.650 | 1.540 | |
12 | 0.840 | 2.160 | 4.200 | 1.320 | 1.800 | 1.750 | |
12.5 | 0.875 | 2.250 | 4.375 | 1.375 | 1.875 | 1.750 | |
13 | 0.910 | 2.340 | 4.550 | 1.430 | 1.950 | 1.820 | |
14 | 0.980 | 2.520 | 4.900 | 1.540 | 2.100 | 1.960 | |
15 | 1.050 | 2.700 | 5.250 | 1.650 | 2.250 | 2.100 |
ダーツの位置をそれぞれまずは直下線を書いていきます。
a…BPの下
b…F点より1.5cm前中心より
c…脇線
d…背幅線とG線の交点より1cm後ろ中心より
e…E点より0.5cm後ろ中心より
f・・・後ろ中心、ダーツ止まりはH点
これらの点を通る垂直線をダーツの中心点とします。今回の総ダーツは15cmなのでa=1.050、b=2.700、c=5.250、d=1.650、e=2。250、f=2,100となります。こられのダーツを参考に今後ブラウスやジャケット、コートの製図に展開していくとよいでしょう。
自分にぴったり合うダーツ量にこだわるなら
また人によっては参考表ではなく自分にピッタリ合うサイズで適応ダーツを入れたいと思う人もいるかもいるかもしれません
先程の表にある通り自分にピッタリのダーツ寸法をとるにはそれぞれのダーツ寸法100%をそれぞれ以下の計算式で分割していかなければなりません。
さきほどの計算方法を元に総ダーツ量を出すと、身幅(B/2+6)ー(W/2+3)となります。例えばウエストが90cmだったとしましょう。その場合は(100/2+6)ー(90/2+3)=8となるので総ダーツ量は8cmとなります。参考の表に8cmはありませんので以下の計算式で計算していきます
8=100%となるのでこれを各ダーツに割り振っていきます。
a 14%=8×0.14=1.12
b 15%=8×0・15=1.2
c 11%=8×0.11=0.88
d 35%=8×0.35=2.8
e 18%=8×0.18=1.44
f 7%=8×0.07=0.56
a(1.12)+b(1.2)+c(0.88)+d(2.8)+エ(1.44)+f(0.56)=8という感じで自分にあうサイズのダーツを作ります。
みての通り、バストとウエストの差が小さいとさほど大きなダーツの寸法にはなりません。
シンプルなワンピースをつくるときなどはa~fを前と後ろに分けてまとめていきましょう。例えばバストが大きければaとbのダーツをたして2.32cmをaでとり、cとdをたして3.68cmをとり、eはそのままの寸法で、fはダーツに入れないでゆとり分にいれるなどいろいろなやり方でダーツを生かした服つくりをするとよいでしょう
実際にできた原型は一度布で作ってみて実際に着てみてより自分にあうように補正をする(原型補正する)ことで自分の型紙を手に入れることができます。
最終的に出来上がった原型の実線だけを厚手の紙に写して切り取っておくと、今後自分サイズの服を作るときには大いに役立ちます。ダーツを入れる位置に小さな切り込みやダーツ止まり、バストポイントなどには小さな穴を開けて製図の時にすぐに印をつけておけるようにしておくと便利です。
ぜひ作ってみてくださいね
袖原型を作る方法
次に袖原型をとります。さきに作成した身頃の原型を使います。
①前身頃のアームホールダーツを閉じた状態で後ろ肩と前肩の高さを2等分します。その真中からBL(バストライン=袖下)までを6等分して5/6の高さを袖山の高さとします。(上記右図 → ← )
② BLの上に身頃のG線を写し取り、袖山線から袖口(SP(ショルダーポイント)から手首点(手首付け根)までの長さを袖口として高さをとります。
③次に身頃の袖ぐりを測って前袖ぐり、後ろ袖ぐりをそれぞれ袖山からBL(バストライン)の線に以下の計算式で引いていきます。
④引けましたら上記身頃原型にもあります▲と同じ寸法を袖下に印をつけます。
このとき、左右袖下の◯●印と同じ高さになるように長さをそろえます
⑤次に前袖山線を4等分して上から1/4の点で直角に1,8cm、おなじく後ろの袖山から1/4同じ寸法をとり、直角に1,9cm直上します(下図)
⑥次にG線(身頃作成時⑨画像参照)を起点として、前袖G線上に1cm、後ろ袖G線より下に1cmに印をつけます。(上図)
⑦この①~④までのポイントをカーブを描きながらつなげていくのですが袖山をつなげるときには先に平行線を少し入れておくと前袖と後ろ袖のつながりが良くなります。
⑦袖ぐり線が引けたので袖山から袖口までを②等分して、そこから2,5cm袖口側へおろして平行線を引きます。ここが肘にあたるEL(エルボーライン)になります。これで完成です。
基本となる原型には袖の型紙がありますが、自分で作る袖山の高さや袖幅は決まりがありません。袖ぐりは同じでも袖山を高くしてドレッシーな仕上がりにしてみたり、袖山を低くして袖幅を広げてラフなイメージの袖にしてみたり、色々な袖作りに原型を活用していきましょう